
「退去のときに全部壊して戻さないといけないの?」「敷金10ヶ月って返ってくるの?」——店舗を出す前に、退去のことまで考える人は少ない。でも、ここを知らずに契約すると、閉店時に数百万円の出費が待っている。内装を作る立場だからこそ見えている「退去のリアル」を、まとめます。
事業用テナント(店舗・オフィス)の場合、退去時には原則「借りたときの状態に戻す」義務がある。住居の賃貸とは違い、事業用は借主の原状回復義務が重い。
具体的には、内装で作ったもの——壁、カウンター、照明、配管の変更——をすべて撤去し、スケルトン(コンクリートむき出し)の状態に戻す。これが「原状回復」の基本ルール。
ただし、ここがポイントなんですが、原状回復の範囲は「契約書に書いてあること」が全てです。契約書に「スケルトン戻し」と書いてあればスケルトンまで。「入居時の状態に戻す」と書いてあれば、入居時の写真が基準になる。だからこそ、入居前の物件の状態を写真で記録しておくことが非常に重要です。
実は、大家さん側にも本音がある。
次のテナントが決まりやすい内装——たとえばきれいなカウンター、使える厨房設備、清潔感のある壁や床——であれば、「壊さないで残してください」と言われることがある。大家さんにとっても、スケルトンに戻されるより、そのまま次のテナントに貸せる方が空室期間が短くなるからだ。
つまり、原状回復は「交渉次第」という側面がある。
内装を残す交渉が成立すれば、退去費用は大幅に下がる。原状回復工事が100〜300万円かかるケースもあるので、これが不要になるメリットは大きい。
ただし、口約束ではなく、必ず書面で残すこと。退去時に大家が変わっていたり、担当者が変わっていたりすると「そんな話は聞いていない」と言われるリスクがある。
事業用テナントの敷金は、住居と比べて高い。家賃の3〜10ヶ月分というのが一般的。仙台でも敷金6ヶ月、10ヶ月という物件は普通にある。
「敷金は退去時に戻ってくるもの」というイメージがあるかもしれない。たしかに、原状回復費用を差し引いた残額は返還されるのが原則。しかし、事業用テナントでは「敷金償却」という条項が契約書に入っていることが多い。
敷金償却とは、退去時に敷金の一定割合を無条件で差し引くという取り決め。たとえば「退去時に敷金の30%を償却する」と書いてあれば、敷金10ヶ月のうち3ヶ月分は理由を問わず返ってこない。
さらに、残りの7ヶ月分から原状回復費用が引かれる。原状回復費用が高額になれば、手元に戻る金額はごくわずかになる。
契約前に必ず確認すべきポイント: ・敷金の償却率(何%か、いつ発生するか) ・原状回復の範囲(どこまで戻すのか) ・原状回復工事の業者指定があるか(指定業者だと相場より高くなりがち)
テナント契約には大きく分けて2つの形態がある。この違いを知らないまま契約すると、退去時に想定外のペナルティを受けることがある。
【定期借家契約】 契約期間を「3年」「5年」などと明確に定める契約。最近はこのパターンが増えている。
特徴: ・期間満了で契約が終了する(更新ではなく「再契約」) ・中途解約は原則できない。できる場合も違約金が発生することが多い ・残存期間が長いまま解約すると、敷金の50%償却などのペナルティがある場合も ・大家側から見ると、期間が確定するので計画が立てやすい
【普通賃貸借契約】 期間の定めはあるが、借主から更新を求められれば原則更新される契約。
特徴: ・借主からの解約は、3〜6ヶ月前の事前告知で可能(事業用テナントは3〜6ヶ月が一般的) ・事前告知をしなかった場合は、その期間分の賃料を支払って即退去も可能 ・借主の権利が比較的強い
出店前に必ず確認してほしいのは「どちらの契約形態か」「中途解約の条件はどうなっているか」の2点。ここを見落とすと、閉店や移転の判断に大きく影響します。
事業用テナントでは、退去の3〜6ヶ月前に大家へ通知する必要がある。住居の1ヶ月前とは全然違う。
これは意外と見落とされるポイント。たとえば「来月閉店したい」と思っても、契約上は6ヶ月前に通知しなければならない場合、残り5ヶ月分の家賃を払うか、6ヶ月後まで営業を続けるしかない。
さらに、退去通知を出してから実際に出るまでの期間にも原状回復工事を完了させる必要がある。工事期間を考えると、実質的にはもっと早く動き出す必要がある。
記憶荘では出店の相談時に、退去条件も含めて契約書を一緒に確認しています。入るときに出口を確認しておく。これが店舗経営の鉄則です。
まとめとして、契約前に必ず確認すべき退去関連のチェックリストを挙げます。
□ 原状回復の範囲はどこまでか(スケルトン戻し or 入居時の状態) □ 敷金償却の条件(何%・いつ発生するか) □ 定期借家か普通賃貸借か □ 中途解約の違約金・ペナルティの有無 □ 退去の事前告知期間は何ヶ月前か
この5つを契約前に確認するだけで、退去時のトラブルはほとんど防げる。逆に言えば、ここを確認しないまま契約するのは危険です。
内装工事の見積もりを取る段階で「この物件の退去条件ってどうなっていますか?」と聞いてくれれば、記憶荘でもアドバイスできます。原状回復工事の費用感も、入居時にざっくり伝えておくことが可能です。出口戦略を入口の時点で考えておく。それが「攻め」の出店計画です。
まだ何も決まっていなくても、大丈夫です。
物件未定でもOK。断りはLINE1本で完了です。